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Cadenceが28nm以降を狙った新型配置配線ツール「Innovus」を発表

2015年3月10日、Cadenceは「Encounter Digital Implementation(EDI) System」の後継となる新しい配置配線ツール「Innovus(イノバス)」を発表した。

プレスリリース文

Cadenceによると、新製品「Innovus」は先端の16/14/10nm FinFETプロセスに対応する配置配線ツールで、既存の配置配線ツール「EDI」と比較して平均10-20%、PPA(Performance,Power,Area)を改善し、TATを最大10分の1に削減する事が可能。Cadenceは「Innovus」をあらゆるプロセスノードに対応可能としているが、先端チップの主流である28nmプロセス以降のチップ設計を主なターゲットに見据えている。

新製品「Innovus」では新技術の導入や既存機能の改善など様々な改良が施されているが、大きなポイントは2つ。一つは、大規模デザインを効率的にハンドリング可能となった点。そしてもう一つは最適化機能が広範囲に強化された点である。

まず、分散処理の機能が改善され、従来よりも広範囲な分散処理が可能となった。Cadenceによると分散効率は既存の「EDI」と比較して最大10倍という事で、分散効率だけでなくシングルCPUでの処理効率も改善されているという話。

また、デザイン・キャパシティも拡張され、インスタンス数5-10Mのより大規模なデザイン・ブロックを取り扱う事が可能となった。これによりデザインの合計ブロック数が減り、結果として設計工数を週単位、月単位で削減できるようになる。

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最適化機能については、「全体最適化」というのが一つのキーワードとなっており、様々な新技術が導入されている。まず今回「Innovus」では新たな配置エンジン「GigaPlace」が導入された。「GigaPlace」は配線長やパスに注目したポイント的な最適化ではなく、全体のスラックのマッピングを行った上で全体的な配置最適化を可能とする。これにより配置の質を改善すると同時にデザイン全体の合計スラック数を1/5-1/10に圧縮できるという事で、配置以外の最適化にも大きな効果がある。

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タイミングの最適化に関しては、分散処理効率の向上と合わせて「GigaOpt」と呼ばれる最適化エンジンがエンハンスされ、タイミング、パワー、エリアの各最適化をワンショットで一気に最適化できるようになった。更にクロック・ツリー・合成に関しては、「CCOpt」と呼ばれるエンジンに「FlexH」と呼ぶ新たなクロック合成機能が搭載され、従来人手で作成していたHツリーライクなクロッキングをフロアプランを考慮して自動的に作成できるようになった。

これら複数の新たな最適化手法によって「Innovus」はPPA(Performance,Power,Area)の改善を実現している。

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その他、設計生産性の向上という面では、同社の新型サイン・オフ・ツール「Voltus」、「Tempus」、「Quantus」のエンジンが「Innovus」に取り込まれ、設計の初期段階からインプリメントとサインオフの誤差を無くした設計が可能に。これらの効果により、「Innovus」を利用すればデザインの目標性能により早く到達可能で、同じ時間を費やせば「EDI」よりも質の高いデザインを実現できるという。

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尚、今回の「Innovus」の発表には既に先行ユーザーとして同ツールを利用しているARM、Juniper Networks、Renesas、FreeScale、MaxLiner、Spreadtrumがコメントを寄せている。ARMはCadenceと共同で「Innovus」を用いて最新のCortex-A72コアを実装し、面積目標をクリアしながら2.6GHz超の動作周波数を達成したとしている。(関連プレスリリース1関連プレスリリース2

日本ケイデンス・デザイン・システムズ社


= EDA EXPRESS 菰田 浩 =

(2015/03/12 )

 

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