NEWS

 
SIEMENS
s2c
 

OrCADユーザーに朗報、設計委託先を探せるネットサービス「きばっちんぐ.com」をイノテックが無償提供

Cadence製品の代理店として各種EDAツールの販売を手掛けている半導体技術商社のイノテックは、Cadenceの基板設計ツール「OrCAD」ユーザーに向けた無償のネットサービス「きばっちんぐ.com」を運営している。

orcad.png

一風変わった名前のサービスだが、「基板」と「マッチング」という単語を組み合わせて「きばっちんぐ」という事らしく、何やら面白そうな話が聞けそうだったのでイノテック OrCAD営業部の高柳氏を訪ねてみた。

DSC_0023.JPG
高柳氏の説明によると「きばっちんぐ.com」はその名の由来通り基板設計のマッチングを行うオリジナルのWebサービスで、昨年9月より運用をスタートしている。ターゲットはズバリ同社の販売する「OrCAD」ユーザーで、基板設計の外注先探しに役立てて欲しいと「きばっちんぐ.com」を考案。実際に同サービスを基板設計業務に活用するユーザーが増えてきているという。

そもそもイノテックがCadenceの「OrCAD」を扱うようになったのは2016年からだが、以前からCadenceの基板設計ツール「Allegro」を取り扱っていたという背景があり、「Allegro/OrCAD」両ユーザーを抱える立場で何かユーザーに貢献できることは無いかと考えたのが「きばっちんぐ.com」の発端だったと高柳氏。

同氏によると「OrCAD」ユーザーの大半が「OrCAD Capture」で基板の回路設計を行い、ネットリストから先のレイアウトは外部の基板設計会社に外注しているため、イノテックはそのスキームのサポートに目をつけた。

具体的には、「OrCAD」ユーザーの外注先として同じく「OrCAD/Allegro」のユーザーである基板設計会社を紹介。これをWeb上で自動化する仕組み「きばっちんぐ.com」を用意した。「OrCAD」ユーザー同士または「OrCAD-Allegro」ユーザー同士であれば、共通の基板データ「.brd」を用いた環境で作業の統一化が図れるため、検図/受入チェックなど作業効率の面でも意思疎通など設計品質の面でも互いにメリットが大きいという。

「きばっちんぐ.com」は会員制の無料Webサービスで「OrCAD」の保守契約ユーザーであれば誰でも会員登録可能。登録ユーザーは「きばっちんぐ.com」を通じて基板設計の委託先を探すことが出来る。委託先は登録されている基板設計会社の中から選んで個別に商談することもできるし、委託する基板設計の概要(仕様や予算)を公開して引き受けてくれる設計会社を募ることもできる。当然ながら登録する基板設計会社の方も「Allegro」または「OrCAD」の保守契約ユーザーであることが条件となる。高柳氏によると現在「きばっちんぐ.com」には「OrCAD」ユーザーが220社以上、基板設計会社が33社登録しているという話だ。

なお「きばっちんぐ.com」には、同サービスのパートナー企業として登録する事も可能。パートナー企業は「OrCAD/Allegro」ユーザーでなくとも登録できるが、登録にあたっては「きばっちんぐ.com」を利用する「OrCAD」ユーザーに製品またはサービスを特別価格で提供しなければならない。これは「きばっちんぐ.com」の利用者にとっては嬉しい話で、実際に特別価格での電子部品の提供や、モデリング、基板検査、基板データ変換などの各種サービスの割引対応などが行われているという。

orcad02.png

orcad3.png
※画像は全てイノテック提供のデータ

高柳氏によると「きばっちんぐ.com」の利用ケースで多いのは委託案件を登録する「公開オファー」のスタイルで、案件を登録すると殆どの場合複数社から何かしらの提案が寄せられるとのこと。公開オファーを出した企業の情報は非公開だが、オファーの内容に対する質問など設計会社とのやり取りはWeb上で公開・共有されるので、個別に同じ説明を繰り返す事無く効率良く外注先を選定できるという。

「きばっちんぐ.com」を完全無料で運営している意味について聞いたところ、高柳氏は「OrCADユーザー同士の交流が活発になり、OrCADのエコシステムが大きくなれば、結果として自分たちのビジネスに返ってくるはず。」とコメント。最近は海外の企業へ設計外注するケースが増えているため、「きばっちんぐ.com」によって少しでも日本の基板設計会社に貢献できれば嬉しいと語った。

「きばっちんぐ.com」はデファクト・ツール「OrCAD」を取り扱うイノテックならではの取り組みと言えるが、ユーザー同士、事業者同士が交流しビジネスを後押しする仕組みは他の設計分野でも見習いたいところ。また、設計外注のプロセスを見直すというのは、コストや品質の改善を図る上でも大きいと思われ、今回のイノテックの試みはプリント基板設計業界に一石を投じたものと言える。そういった意味で今後も「きばっちんぐ.com」には注目していきたい。

イノテック株式会社

 問い合わせ先
 OrCAD営業部 orcad@innotech.co.jp

= EDA EXPRESS 菰田 浩 =

(2020/05/19 )

 

ページの先頭へ